Twitterでトレンドにもなり文化が消えてしまうのではないかなどと大きく騒がれていますが、焦る必要はないと思います。一つずつ対処法を考えていきましょう。
筆者は勉強中の身であり自身の勉強目的で調べて書いているものであるため誤った解釈があるかもしれません。この記事を鵜吞みにせず身近な弁理士に確認するなどしてください。また、間違いを見つけた方はご指摘していただけると幸いです。すぐに調べて訂正します。
・「ゆっくり茶番劇」と題して動画を投稿することが制限されるだけで「ゆっくり茶番劇」という名称を使用しなければこれまで同様YouTubeなどに動画投稿できる ・商標登録出願日前から「ゆっくり茶番劇」を使用していたら「ゆっくり茶番劇」を使用できる(但し周知性が必要) ・そもそも商標登録が無効になる可能性がある
これらのことが考えられます。
本件に関係する商標法の条文(思いつく範囲)
第3条1項6号(商標登録の要件) 第4条1項10号15号19号(商標登録を受けることができない商標) 第32条1項(先使用権)+第28条(登録商標等の範囲) 第43条の2(登録異議の申し立て) 第46条1項2項(商標登録の無効の審判) 参照:e-gov商標法https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000127
問題となっている登録商標
指定商品指定役務の区分は第41類のみとなっています。
出典:登録6518338 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2021-114070/F3A3517B2BE17F2B5A64398A955EDC9F885A39A3B583EC068237E35E0537F034/40/ja
特許と混同したツイートを複数確認しましたが、これは“商標登録”であって“特許”ではないことを留意しなければいけません。
これまで投稿されてきた「ゆっくり茶番劇」の動画の構成・内容を制限するものではないため同じテイストの動画を「ゆっくり茶番劇」の名称を使用しなければ問題なく投稿できます。 また、「ゆっくり茶番劇」の商標登録出願時以前から日本国内において第41類の類似範囲内で使用していた場合先使用権といって登録商標をこれまでと同様に使い続けることができる権利が認められる可能性があります。
“(先使用による商標の使用をする権利)
第三十二条 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。“
ただし、この権利が認められるためには周知(広く認識された)になっている必要があり、周知の範囲は商標法第4条1項10号の範囲と同様とされています。周知でなければ保護する価値がないとして認められません。
具体的に何回再生されたか、何人登録者がいればよいか自分では判断できず、先使用権が認められるかどうか分かりません。そこで商標法第28条(登録商標等の範囲)の判定を求めることで自分に先使用権があるかどうか知ることができます。
次に、そもそも商標登録が無効になる可能性があるとはどういうことか書いていきます。 誰でも請求できる商標登録異議申し立ては公報掲載から二か月以内に請求しなければいけませんが、期間を過ぎているため今回は請求できません。しかし、利害関係人のみ請求できる商標登録無効審判の請求はできるため商標登録を初めからなかったものにできる可能性があります。
商標登録の無効の審判は商標法第46条に規定されています。 “第四十六条 商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。一 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定に違反してされたとき。 (略)2 前項の審判は、利害関係人に限り請求することができる。“ 条文はこのようになっています。
「ゆっくり茶番劇」は第3条1項6号(商標登録の要件)、第4条1項10号15号19号(商標登録を受けることができない商標)の全て若しくはいずれかに違反するのではないかと考えています。
※実際にどの条文に基づいて請求できるか私は分かりません。特に第4条1項10号15号の関係性が今のところ理解できていないです。
第3条1項6号、第4条1項10号15号19号の条文は以下の通りです。 “第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。 (略)六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標“ “第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。 (略)十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの (略)十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。) (略)十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)”
無効審判を請求できる利害関係人とはだれなのか特許庁の審判便覧によると “無効審判を請求し得る利害関係人(特§123②、§125 の 2②、商§46②)と は、特許(商標)権などの存在によって、法律上の利益や、その権利に対する 法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者をいう。” 出典:特許庁審判便覧第19版https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/sinpan-binran.html
具体例としては以下の5つが示されています。
当該登録商標と同一又は類似である商標を同一又は類似の商品等に使用している/していた者 当該登録商標と同一又は類似の商標を将来使用する可能性を有する者。当該登録商標と同一又は類似の商標の使用を準備している者。 当該登録商標により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者 当該商標権の専用使用権者、通常使用権者等 当該商標権について訴訟関係にある/あった者又は警告を受けた者
このようになっているため前述した先使用権が認められなかった人も商標登録無効審判を請求できる利害関係人に該当すると思われます。
商標登録無効審判によって商標登録を無効にすべき旨の審決が確定されると「ゆっくり茶番劇」の商標権は初めから存在しなかったものになります。(商標法第46条の2)
私が考えたことは以上です。 筆者は勉強中の身であり自身の勉強目的で調べて書いているものであるため誤った解釈があるかもしれません。この記事を鵜吞みにせず身近な弁理士に確認するなどしてください。また、間違いを見つけた方はご指摘していただけると幸いです。すぐに調べて訂正します。
参考文献:2020年,発明推進協会, 特許長編工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第21版]